お茶の種類 − 日本のお茶

●煎茶

私たちが一番身近に感じるお茶が煎茶です。お茶の生産量は長く10万トンを維持していましたが、現在では生産者の高齢化もあって、9万トンを切ってしまいました。その9万トンの内のほとんどが大きな意味での煎茶です。栽培する茶樹はヤブ北種が大半を占めており、昔からの在来種は少なくなっていますが、茶業者の中には在来種を好む方も少なくありません。お茶の栽培は、冬から春にかけて、挿し木で育てた2〜3年半の苗木を植えます。5年位で茶園らしくなり、その後本格的なお茶の摘み取りができるようになります。その摘んだ茶葉を蒸して、揉み乾燥して完成します。これが煎茶です。お茶の味は、渋味の中に甘味があり、後味がさっぱりしています。

●普通蒸し煎茶

普通蒸し煎茶とは従来の製造方法で作ったお茶のことです。栽培方法によるものではなく、茶種によって分けられたものでもありません。見分け方は茶葉の形状が針のように伸び、硬くなっていて、お茶を入れた時に茶葉が開くのが遅く、香りは若葉によく似ています。お茶の味は、さっぱりしていて飲みやすいです。

●深蒸し煎茶

お茶の栽培方法と茶種は普通蒸し煎茶と同じですが、製造工程が少し違います。深蒸し煎茶は緑茶の製造工程で一番大事な蒸し工程の時間を長くします。茶葉によって(例えば、若い芽や硬い芽)蒸し時間・蒸気圧・撹拌回転数を調整し、短時間で浸出するお茶に仕上ます。渋味が抑えられていていますが、味は濃厚で、香りは薄くなっており、茶葉は砕けています。

●水出し煎茶

水出し煎茶は(特に夏に)冷たいお茶を飲む方法として考えられました。お茶は本来、お湯で飲むために作られていますが、そのため普通のお茶を水で浸出するには時間がかかりすぎ、今の時代には合いません。そこで、お茶を細かくしたり、深蒸し茶を使うことにより、おいしいさっぱりとした水出し煎茶を作ったというわけです。

●玉露

玉露の栽培方法は煎茶と異なり、茶園に棚を作り、藁やカンレイシャをかけて遮光します。覆いの中は日中でも暗く、光が遮られるため、タンニンの少なく、アミノ酸の多いお茶になります。煎茶に比べてタンニンが少ないため、今話題のカテキンの含有率は低いです。製造方法は煎茶と同じで、茶種はコマカゲなどの玉露に適した品種があります。玉露の味の特徴は、アミノ酸が多いためにできる甘味と被覆栽培であらわれる覆い香です。お茶の形状は、濃い緑色でやや柔らかい仕上がりとなります。煎茶よりも湯の温度を低くすることがおいしく飲むこつです。

●かぶせ茶

玉露と栽培方法がよく似ています。簡単に言えば、被覆の仕方や日数が違います。一般的に、被覆をする方法は茶園にカンレイシャをかけて、日数は玉露よりも短くします。お茶の味としては、煎茶と玉露の中間的なもので、香りは玉露に近いです。奈良県ではかぶせ茶の栽培が多くなってきています。

●芽茶

煎茶や玉露を再製加工する工程で分類された製茶の工程で揉まれてできた茶葉の先端のとがった芽の部分を集めた形状の丸いお茶。品質的には上級茶に分類されます。味は濃く、何煎も出ますが、お茶の量・浸出時間を注意して入れることが大切です。

●茎茶

煎茶や玉露を荒茶から加工する時に、荒茶から取り除かれた茎を集めたお茶。店頭では「かりがね」「白折」とも言われています。茎の特有の草のような若々しい香りとさわやかな味が特徴です。香りはよくたちますが、何煎も出るお茶ではありません。たいてい3煎が限度です。

●粉茶

荒茶から煎茶・玉露へと仕上げ加工する時に、主に切断工程で細かく砕けたお茶を集めたもの。茶葉はお茶の形状をなしていなくて粉状で、普通の急須では目詰まりをおこします。下級品から上級品まであって、何煎も出ます。味・香りともに濃厚です。

●てん茶(碾茶)

抹茶の原料であるてん茶は、茶葉を蒸して揉まずにそのまま乾燥したものをいいます。栽培方法は玉露と同じで覆いを被せて育てます。上級茶は年に一度の摘採です。製造工程は、他のお茶の工程とは大きく違い、蒸し工程・乾燥工程のみです。上級茶の場合、その出来たお茶の葉脈を取り除いててん茶の製品にします。てん茶にお湯を注いで飲んでみてもおいしくありません。

●抹茶

製品になったてん茶を石臼でひいたものが抹茶です。石臼で時間をかけて少量ずつ挽いていきます。宇治は上級抹茶の生産地で、上級茶になりますと石臼で1日にひける量は100g〜200gの少量です。特に気をつけなければならないことは、石臼の温度、回転数、投入量でこれで品質が決まります。大量生産が可能なセラミックボール式もありますがあくまで下級茶用で、今でも石臼に代わるものはありません。抹茶は一般的に茶道で使われるお茶です。奈良県の佛隆寺には、空海が唐より持ち帰った石臼が伝えられています。これを考えてみますと、この時抹茶が日本で飲まれていたのではないかと思われます。これが武家に受け入れられて、織田信長、豊臣秀吉、千野利休、徳川家康らの茶人が歴史上にあらわれてくることになります。抹茶の産地は宇治と愛知県の西尾です。飲み方はうす茶と濃い茶があります。

●釜炒り製玉緑茶・蒸製玉緑茶

釜炒り製玉緑茶 : 製造工程は一般茶と違い、生葉を蒸さずに加熱した釜で炒ります。それから水乾工程、締炒り工程と続き、この工程で勾玉状にします。水色は全色濃厚で、香味に特有の釜香があり、喉ごしがさっぱりしています。香ばしい釜香が水道水のカルキ臭を消す効果があり、またクセのある水にも対応性があります。

蒸製玉緑茶 : 製造工程は一般茶と同じく、蒸しから始まり、異なるのは精揉工程がないことで、この工程に代わる締工程により勾玉状にします。水色は黄緑色で香味に爽快性があり、渋味が弱く、後味に清涼感があります。煎茶より"よれ"と"ねじり"がきついために急須に入れた時に溶解に時間がかかり煎がききます。

●手揉み茶

現在の製茶機械が出来るまではこの方法でお茶を製造していました。簡単にいいますと、かまどの上に和紙を置いて、その上に蒸した茶葉を広げます。その茶葉を手で和紙の上を右左へと押しながら動かしたり、両手で茶葉を挟んですり合わせたりします。これを繰り返し行ううちに、茶葉がよりかかって針のような形状になっていきます。さらに下から和紙が熱せられていますので、乾燥して製品になりますが、一回で出来る量は少量でとても貴重です。

●粉末緑茶

お茶の欠点の一つは茶ガラが出ることです。さらに急須も必要になってきます。これを解消できるのが、パウダー状のお茶である粉末緑茶です。粉末緑茶は茶葉を微粉砕機で粉砕して作ります。
 粉末緑茶を湯呑みに入れ、お湯を注ぐだけで簡単にお茶が出来、茶ガラがでません。また、お茶の栄養成分であるカテキン・ビタミンCは水に溶けて一般のお茶でも栄養成分を摂取できますが、普通のお茶では茶ガラに残ってしまうビタミンA・ビタミンE・食物繊維などの成分も粉末緑茶では摂取できます。よく似たものに抹茶がありますが、抹茶は覆いをしたてん茶が原料でカテキンの含有量は少なく、粉末緑茶は抹茶より粒子が少し粗いためスプーンでかきまぜるだけで溶けてしまいます。

●ほうじ茶

煎茶や番茶、茎茶などを強火で炒って、焙煎香をつけたお茶です。有名なものには京番茶があります。茶葉は変色して茶色になり、水色も濃い薄いはあっても茶色になります。カフェイン・タンニンが少なく、子供やお年寄りに最適で、香ばしい香り、さっぱりした味が特徴です。また、古くなったお茶をフライパンで炒れば、簡単にほうじ茶を作ることができます。

●番茶

一般には安いお茶の代名詞となっていますが、奈良県では初茶の摘採の後に刈り取って製造したものをいいます。5月の末から6月の中旬にかけて摘み取りを行い、硬い茎と硬化した茶葉までを深く刈ります。これには茶園を整える意味もあります。品質的には下級品で、味・水色は薄く、一種独特な香りがあります。また、9月末から11月頃に生産する秋番茶もこれに含まれ、形状は赤骨が目立ちます。日干番茶というものもあります。

●玄米茶

煎茶や荒茶に炒った玄米を、一般的に1対1の割合でブレンドしたお茶を玄米茶と呼びます。味よりも香ばしい香りを楽しむお茶で、すっきりとした味わいが特徴です。上級品には餅米を炒ったものを使っており、一段と香ばしくなります。また、簡単に美味しくいれることが出来る抹茶入玄米茶がありますが、これは玄米茶に抹茶をブレンドして作ったものですが、一煎目に抹茶が大部分ででしまうのが欠点です。

Home